実際の支援事例
以下の事例は実際の支援事例をもとに個人情報に配慮し、支援の本質は変えずに改編を加えた架空の事例です。
小学生 Aさん 自閉スペクトラム症(ASD)
背景とアセスメントの結果
ご相談に至った背景
【生活について】
小学校では普通級と支援級を併用していました。支援級に行く時間になっても廊下やグラウンドをふらふら歩いていたり、窓から外を見てぼんやりとしていたりしました。学校からは、教室についてからも課題に取り掛かるまで時間がかかると評価されていました。家庭でも、身支度や翌日の準備などに時間がかかっていました。
【学習について】
気が散りやすく、1問解くと手が止まってし、すぐに落書きを始めます。まれにスイッチが入ると集中力を発揮します。漢字の書き取りをしていると、線が1本多くなったり、点が1つ少なくなったり間違うことがあります。その間違いに気が付かずにそのまま反復練習をしてしまいます。
アセスメントの結果
生活面の様子からは自閉スペクトラム症の傾向がより強く出ていることが見受けられ、今何をしなければいけないのか、その先にどうなるのかといった場面の理解や見通しを立てることの難しさがあるものと考えられました。宿題をする時にまれにスイッチが入るというのは、やることが明確になると取り組みやすくなることを示していると考えられ、課題の見える化や言語化をしっかりとサポートすることが重要といえます。
読み書きの検査より、読み書き障害の傾向が指摘されました。視知覚の検査から、背景には、眼球運動の未発達が示唆され、教科書等の文字の並びを目で追いながら読み上げることが難しく、これが音読のたどたどしさにつながっていると考えられました。同様の理由で黒板の書き写しや漢字などの書き取りにも苦労していることが想像されました。漢字の書き取りミスには、自閉スペクトラム症による学習効率の悪さもあるものと考えられました。
実際の支援
支援の方針
【物理的環境の調整】
学習に不要なものを取り除き、作業スペースを整理整頓することで不要な刺激を取り除きましょう。壁に向かって座る、卓上の衝立を置き視界を遮るなどの工夫も効果が見込めます。
【ツールの活用】
当日の学習課題や宿題を時間にそって一覧表にして目で見て分かるようにしましょう。
カウントダウンタイマーを使って、集中する時間と休憩の時間が一目でわかるようにして、どこまで頑張れば良いのか見通しが立てられるようにしましょう。
【教材の工夫】
例えば「関」という漢字を練習するのであれば、「門」までをあらかじめ記載しておき、残りを完成させるという練習を取り入れてみましょう。これを通して漢字がパーツでなりたっているという部品意識を身に着けてもらい、漢字学習がもっと効率的に出来るようになることを目標にしましょう。
音読の際には、リーディングルーラーという読み飛ばしグッズを使ってみましょう。目の動きを補ってくれるので、読みやすくなり、上手に読めたという自信につながることが見込めます。
【学習に関しての長期的視点】
今後は、応用問題や文章問題をこなすことにはやや困難が伴っていくかもしれません。それを見越して、まずは漢字の書き取りや読み、計算問題などの基本問題を確実に正解できる下地をつくることが重要になってくると言えます。そのためには、ドリルのような基本問題の反復練習が有効と考えられます。ドリルは、やることが明確で構造がはっきりしているため、Aさんの特性からも受け入れられる可能性が高いです。
【療育プログラム】
社会的スキルトレーニングの実施
眼球運動、見たものを判別する速度に関するビジョントレーニングの実施
実際の支援
【個別療育の実施】
通所している放課後等デイサービスと連携し、個別療育として、上記の支援方針の実行をお願いしました。社会的スキルトレーニングにて、日常生活での具体的な場面を設定し、どのよう動くべきか等のパターン学習を進めました。また、見る力の向上を目指し、ビジョントレーニングも定期的に実施してもらいました。
【学校との連携】
アセスメント結果の共有とともに、通級制度の使い方、中学校進学に向けての方針の検討等をすすめました。
【ペアレントトレーニングの実施】
お母さんと継続面談を行いました。自宅での学習環境の整備や支援ツールの活用等について、試行錯誤を行い、お子さんにあった方法を見つけ、その方法が定着するまで伴走支援をしました。
支援の結果
- 漢字の書き取りテストで100点を取れるようになったり、少しずつ音読もできるようになったりと、学習面での支援効果が表れ、本人の自信にもつながっています。
- 中学校に進学後も、普通級と支援級を併用しながら元気に毎日通学できています。
小学生 Bさん 注意欠如多動症(ADHD)
背景とアセスメントの結果
ご相談に至った背景
【生活について】
小学校では普通級と支援級を併用していました。落ち着きのなさは目立っておらず、友達とのコミュニケーションも取れていました。一方で、作業を途中で止めて違うことを始めたり、突然全く関係ない話を始めたりということがあり、周りからは飽きっぽいと見られていました。
【学習について】
気が散りやすく、すぐにノートのはしっこに落書きを始めます。算数で計算はあっているものの、回答を転記する際に書き間違いをしてしまうことが多く、それで不正解となってしまいます。
例えば、158という答えを出しても、回答欄に書く際に185と書いてしまう。
アセスメントの結果
心理検査の結果から、「どうしてそうなるのか。」、「次にどんなことが起きるのか。」といった論理的に物事を考える力は長けていることがわかりました。一方で、やるべきことを覚えておくことや、注意力を保つこと、時間を管理することなどが苦手であることもわかりました。飽きっぽいと見えている特徴も、やるべきことを頭に残しておくのが難しいために気になったことに行動が移り変わってしまうという特性のためといえます。
感覚の検査をしたところ、音への過敏性や足がぶらぶらすると落ち着かないという特性が見られました。これらも注意の続かなさをより引き出してしまっていると考えられました。
読み書き検査の結果より、読み障害の傾向が指摘されました。一文字であれば問題なく読めるものの、単語⇒文章と複雑になると読み飛ばしが頻繁に起きてしまいます。視知覚の検査から、背景には図と地の弁別の力の課題があることが分かりました。つまり、たくさんの文字が並んでいる中で、今注目すべき大事な文字や部分に注意を向けることが苦手で、そのために読み間違いや読み飛ばしが起きていることが考えられました。学習の課題にある、答えの転記ミスもどうようの背景が影響している可能性があるといえます。
実際の支援
支援の方針
【物理的環境の調整】
学習に不要なものを取り除き、作業スペースを整理整頓することで不要な刺激を取り除きましょう。壁に向かって座る、卓上の衝立を置き視界を遮るなどの工夫も効果が見込めます。
静かな環境にする、耳栓をする等、音の刺激を減らすことも集中力の持続に効果的と考えらえます。
足がぶらぶらすると落ち着かないのは、重力不安という特性です。床に座るか、足が床に着く高さの椅子を用意する等の配慮も大切です。
【ツールの活用】
カウントダウンタイマーを使って、集中する時間と休憩の時間が一目でわかるようにして、どこまで頑張れば良いのか見通しが立てられるようにしましょう。ポモドーロタイマ―の様に時間が絵や円グラフで表示されるものが良いでしょう。
【教材の工夫】
デジタル教科書が使える場合は、ハイライト機能を活用し、読んでいる部分の背景色を変えるなどの注目すべきポイントが分かるように補助をしましょう。図と地の弁別が苦手な場合には特に効果が見込める方法です。
音読の際には、リーディングルーラーという読み飛ばしグッズを使ってみましょう。目の動きを補ってくれるので、読みやすくなり、上手に読めたという自信につながることが見込めます。
【集中力のマネジメントについて】
不注意傾向がある場合は、単純課題の反復や同じ科目を続けると注意がより散漫になる悪循環に陥りやすいです。問題集に取り掛かる際は、最初から順番にこなすことにこだわらずに、単純課題と応用課題をおりまぜたり、終わっていなくても飽きたら国語から算数に変えるなど、集中力が切れない工夫をすることも効果が見込めます。
【療育プログラム】
図と地の弁別に関するビジョントレーニングの実施
実際の支援
【個別療育の実施】
通所している放課後等デイサービスと連携し、個別療育として、上記の支援方針の実行をお願いしました。見る力の向上を目指し、ビジョントレーニングも定期的に実施してもらいました。
【学校との連携】
アセスメント結果の共有とともに、通級制度の使い方、中学校進学に向けての方針の検討等をすすめました。
【ペアレントトレーニングの実施】
お母さんと継続面談を行いました。自宅での学習環境の整備や支援ツールの活用等について、試行錯誤を行い、お子さんにあった方法を見つけ、その方法が定着するまで伴走支援をしました。
支援の結果
- 試行錯誤を行いながら学習環境の調整を行った結果、少しずつ集中力を持続させることが出来るようになりました。今後は、ADHD向けのコーチングを導入し、自分で自分の特性とうまく付き合っていく方法を模索することも検討しています。
- 中学校に進学後も、普通級と支援級を併用しながら元気に毎日通学できています。